いつものように、職場に出勤すると、経産婦さん、今回二人目。
前回は3000グラムの元気な女の子、ノーリスクで出産経験ありでした。
「一緒にがんばろうねー!!」
「私、前もそうでしたけど、ぐっと来たらすぐ生まれるんです。今回も大丈夫だと思いまーす」
なんとも心強いお言葉。
内診所見は子宮口6センチ、頚部展退80パーセント、赤ちゃんを包んでいる膜、胎胞も徐々にパンパンになりつつあり。
胎児の頭はまだやや高めのステーションマイナス1、でも頚部の進展も良くなり、とても柔らかい。
いつも思いますが、女性の膣内も熟化が進んでくると、とても柔らかく、暖かくなってきます。
ふんわりした感触を産道全体に感じます。
「安産できそうね」
心の中で少し安心ムードが漂いますが、お産はコレからが勝負。
どんどん狭い所に胎児は突入していくのですから、最後迄油断大敵!
この産婦さん、
「昨日とても熱が出た。38度台の熱が朝からあったので、近くの内科を受診し、そこでインフルA型と診断を受けた」
との事。
おそらく、リレンザという治療薬をもらって、口からシュッ!と吸い込んで熱が引いているのでしょう。
予防接種も受けているとの事で、やや安心しました。
モニタリング上の所見は、やや細変動少なめだが、リアクティブ取れない事もない…という程度。
なんせ入院からまだ40分だから、モニタリング続行中です。
そんな事をうだうだと考えていると、
「あっ来ました!きばりたい〜」との訴え。
するとすでに胎胞が見え隠れしています。
胎胞の後ろには期待通りしっかりと頭がついて下りて来ています。
私は人工破膜は嫌いです。
普通はしません。
膜は膜の役割があるのです。
今回は胎児の頭を連れておりてくるという大役をしてくれています。
同時に、正しい胎位胎向に誘導するという役割もあります。
とてもお利口なのです。
間もなく、パン!と自然破水、破水前後にやや一過性の除脈みられましたが、コレくらいは問題ないと考えます。
ところが、
予想に反してその羊水が、なんとドロドロの緑色どころでは無いのです。
サラサラの黒っぽい胎便のような色。
「何コレ?」おもう間もなくベビーはつるりと生まれました。
その後羊水は血性でしたが、大きなコアグラは出ていません。
私の感覚では、早期剥離にちがいないが、胎児娩出と同時に剥がれたのでは?と思いました。
そのベビーですが、筋緊張が少し弱いけれど、元気に泣いています。
動脈血のPH 7.34 BE−1.5 特に何もありませんが、皮膚全体の色が悪いのです。白っぽいのです。
「元気そうだけど気になるから保育器に入れて様子みましょう。」
ということになりました。
それから1時間後、手足をバタバタと動かしています。
サーチュレーションも90台後半で,クベース内の酸素は25パーセントですが、その中で呼吸も安定しています。肺雑音もありません。
でもなんか変、皮膚全体に白すぎる。おかしい。
この活気なのにこの色、まるでチアノーゼ。でもSPO2は悪くない。
再度採血することにしました。
その値はPH7.O Hb9.0 貧血状態でした。
その子は直ちに指定病院に搬送され治療を受けています。
分娩の管理上、この胎児貧血は予測できなかったです。
モニター上もサイヌソイダラス波形は出ていません。
出生後の動脈血もなんら異常は認められないのですから、このケースは通常の分娩方法を選択した事は正しかったのでしょう。
ガイドラインでは、羊水混濁があるからといって出生後は酸素投与する必要なく、出生児の全身状態みてを判断するべきとあります。
このケースは、アプガールスコアで言えば7点です。
筋緊張マイナス1とカラーでマイナス2点です。
ただその後、トントンと回復しているのでやや油断したといえます。カラーは戻りませんでしたが…
その後胎盤をチェックしましたが、胎盤に血腫が付着しておらず、早期剥離兆候も無く特にグレードが悪くもなく、きれいでした。
また臍帯の損傷も認められず、付着部位も正常位置です。
この分娩の出血量は450グラム。その後2時間迄の出血も500グラム以内にとどまりました。
(アトニンの点滴を産後施行しましたので)
頭の中で、色々な事が繋がらない、首を傾げる事のいくつもあるお産になりました。
母体は通常より速い4日目に、赤ちゃんはその後治療にて貧血改善しています。
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