はじめまして、助産師のTAN です。現在日雇いです。
数ヶ月前、とてもレアなケースですが、ラッキーでもあったお産をご紹介します。
寒い夜でした。泣く子も黙る丑三つ時、1本の電話が鳴りました。
「破水したみたいです。お産はじめてです。」とのこと。
その30分後、その方はご主人と一緒に歩いて来院されました。
「お待ちしていました〜。痛みはでてきてますか?」と、お聞きすると、
「はい!少しだけ… 赤ちゃんも動いています。」と満面の笑顔。
この様子だと、分娩第一期始まってなさそう…と思い、まず、診察をする事にしました。
内診するため、仰向けになっていただき、そろっと指を入れてみると、何か変!!いつもと違うのです。
通常、規則的に陣痛が始まる前に破水をした初産婦、羊水もあまり出ておらず、胎児が動いている、という前情報で、期待する内診所見は、子宮口がまだお尻の方を向いている後方に位置し、開き具合も1−2センチ程度、胎児の頭も指が届く程度と想像します。
ところが、その子宮の口は、指をまっすぐに入れた前の方向にポッカリと開いていました。約4センチですが、頚部の展退は60パーセント、硬さもあります。
不思議な事に、普通はその子宮口を覆うように先進している頭がくっついているのですが、頭は完全に浮いている状態で、かろうじて一部が子宮口から数ミリ上に触れました。
もっと奇妙だったのは、その開口部が、やたらボコボコしていること。
「子宮の入り口にポリープあると言われた事ありますか?」とお聞きすると
「一度もない」との事。
なんだかドキドキしてきました。
そうなると最悪の事を想像します。 そう、頭位の臍帯脱出…
その膨らみをそっと触り拍動を探ると、しっかりありました。間違いない。臍帯拍動です。1分間に50から60回くらいの速さ。
その指を入れたまま、ナースコールを押し、一緒に勤務している助産師に来てもらいました。
「右で、拍動触れます」と伝えると、
「臍帯脱出!」彼女の顔色も変わりました。
とりあえず、一緒に腹壁上からドップラーで心拍を確認すると、そのビートも私が今触っている拍動と同じです。
もう間違いありません。
それからは、竜巻が舞い降りたかのよう。
少ない夜勤スタッフ全員、すべてやりかけの仕事は中断し、帝王切開の用意です。
私は、その拍動が止まらない事を祈りながら、これ以上臍帯が圧迫されないように、頭のある右を下にして横向いてもらいました。それで、浮いている頭が少しズレたようで、拍動が徐々に戻り、80回から100回くらいまで回復してきました。
長い長い時間でしたが、実際は20分しか経っていません。
何度か、軽い陣痛があり、そのつど、すうっと胎児の頭が下りて、臍帯を圧迫していましたが、完全に固定するところまではいかず、心拍は60から100回を変動していました。
今回は、とても敏速な準備で、すばやく人も集まり、奇跡的に3200グラムの元気な女の子、アプガール9点で生まれました。
あ〜よかった…本当によかった。
今回私は、何が始まっているのか、どういう状態ですすんでいるのかを、患者さんとご主人にタイムリーに説明する余裕が
全くありませんでした。
「ごめんなさい!後で状況を説明します」とご主人に告げるのがやっとでした。
これは、本当はとても良くない対応だったな〜 反省です。
その7日後、元気な赤ちゃんを抱いて、ご夫婦そろって退院されました。
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